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【小学校の校長室から】全国学力・学習状況調査とペアレントクラシー 校長 山田耕司

○ 2007年から続きます「全国学力調査」の結果が8月に公表されました。県別(公立)では福井県・石川県・秋田県がテストの正答率が高いと分かりました。この3県は、「図書館利用率」「体力テスト」「自己肯定率」の全国調査でも上位に位置しています。「学力」とこれらの重なりに「教育や子育てに欠かせないものは何か」が示されているように思えますね。

○ 人口の集中する政令指定都市(20市)の結果も昨年に続いて公表されました。京都市・さいたま市・仙台市がよい成績を収めているのに比し、大阪市が連続最下位でした。かつての「橋本(大阪府知事)教育行政改革」を引き継ぎ、危機感を持つ大阪市長さんは、全国学力テストに具体的な数値目標を設定し、達成状況を学校に配分する予算に反映させる制度を導入する考えを示しました。 「えっ! 英国の模倣ですか?」

○ 私は1998年~2001年の3年間、政府派遣教員としてロンドン日本人学校(小・中)の校長を勤めておりました。現地の8つの小学校・中等学校(中学高校)と学校交流をしました。その一つアクトン中等学校は日本人学校に近いイスラム系の移民の多い町にありました。
 イギリスでは1980年代のサッチャー政権下での教育改革により、日本の学習指導要領に相当するナショナル・カリキュラム、その実施状況・学習到達度状況を調査するナショナル・アセスメント・テスト(共通学力テスト)やスクール・インスペクション(学校査察、学校評価)の制度が導入され、同テストと学校査察の結果がすべて学校別に公表されるようになっていました(イングランドとウェールズが中心で、スコットランドは異なる方式を採用)。その結果、学校の学力レベルや良しあしに対する関心が高まり、学校選択を行う保護者が増加し、教育機会・教育達成度が、家庭の階層的・経済的要因に加えて、家庭の文化的環境や保護者の積極的な教育支援に左右され、教育格差が拡大する傾向が強まっていました。アクトン中等学校は長い間最下位層にありました。しかし、チャールズ皇太子がアクトン中等学校の強力な支援者として活動を始めると協力者の寄付金が増え設備備品が充実し、加えて生徒・教師の意欲や努力も増し、「最高躍進学校」として表彰されるまでになりました。
 一方、英国にはパブリックスクール(私立学校)による教育があります。この夏愛子妃が短期留学されたイートン校に代表されるものです。各校建学の精神の下、伝統的な学校生活を送ります。学問・スポーツ・宗教哲学を寮生活を基本に仲間と5年間を学び楽しみます。

○ サッチャーの教育改革が進む中、イギリス、カーディフ大学の教授P.ブラウンが1990年にペアレントクラシー(parent cracy)という概念を提起しました。
 どういう教育を受けることができるか、どういう高校や大学に入学できるかといった教育機会・教育達成度や職業的・社会的地位や報酬が、個人(子ども)の努力と能力によって左右される社会の仕組みや規範をメリトクラシー(能力主義という意味に近い)というのに対して、特に教育達成度について、ペアレント(親・保護者)の教育への関心と積極的な教育支援(家庭や学校外での学習環境の整備充実や学校情報の収集・提供と助言など)によって左右される社会の仕組みや規範をペアレントクラシーといいます。

○ 日本の現状は特に1990年代以降、高校入試・大学入試の多様化や、学校週5日制の導入拡大、学校選択制の導入などを背景として急速に英国同様の傾向に近づいているといわれます。最近の週刊誌や月刊誌などが、首都圏・関西圏の鉄道沿線別受験偏差値一覧や東京の学校選択制導入地域の人気度一覧の特集記事を載せるとか、親子で取り組む大学入試や有名大学受験の成功体験の特集記事を載せるといった事態にも象徴的に表れています。子どもの学力形成には、「家庭の力」と「学校の力」の双方が寄与しています。大人が教育や学力にどれだけの見識を深めるか労力をかけるかが違いを生むことになりましょうか。如何ですか……。