福岡海星女子学院高等学校 福岡海星女子学院附属小学校 福岡海星女子学院マリア幼稚園  

【小学校の校長室から】聖書と西郷どん 校長 山田 耕司

○ NHKの大河ドラマ「西郷どん」を楽しく見ています。貧困武士の町「下加治屋町」出身の若き武士たちが新しい日本をつくる原動力の一つとなった話を、女性作家の原作を女性脚本家がつくる痛快(漫画のような)物語です。この町で行われた教育「郷中教育」(ごじゅうきょういく)とも「五什教育」(五人組教育・十人組教育)とも言われます。藩校には通えない下級武士の青年(二才(にせ)・ニセ)がグループをつくり後輩を指導します。
 私が「郷中教育」を知ったのは、ロンドン日本人学校で同僚であった鹿児島出身のH先生(剣道有段者)との出会いからです。今でも鹿児島では学校教育に「郷中教育」を取り入れている言われるのです。
10数項目ある教えの中で、私が興味を覚えたものは、「①嘘をつかない ②弱いものをいじめない。最も弱い人を助ける ③何事も仲間で話し合い相談しあって解決する ④山坂を歩いて身体を鍛える ⑤金銭欲・利欲が最も卑しむべきこと ⑥外見にこったりせず質実剛健であること ⑦忠孝は大仰に見せず常に内心にもつこと」の7つでした。

○ 公立学校では公には特定の宗教の話はできませんが、クリスチャンである私はプライベートな席ではよく聖書の話をします。私の学校経営の根拠が聖書にあることを同僚に知ってほしく理解し協力して欲しいからです。
H先生の語る「郷中教育」は聖書のみ言葉に近いものを感じました。

「あなたがたは地の塩である。だが、塩に塩気がなくなれば、その塩は何によって塩味がつけられよう。もはや、何の役にも立たず、外に投げ捨てられ、人々に踏みつけられるだけである。」   
「あなたがたは世の光である。山の上にある町は、隠れることができない。 また、ともし火をともして升の下に置く者はいない。燭台の上に置く。そうすれば、家の中のものすべてを照らすのである。
 そのように、あなたがたの光を人々の前に輝かしなさい。人々が、あなたがたの立派な行いを見て、あなたがたの天の父をあがめるようになるためである。」(マタイ 5章13~16節 地の塩、世の光)

○「あなたがたは地の塩である」とは
 「地」は人が今生きている世界(地上)を意味します。「塩」は料理に味わい(塩味)を添え、腐敗を防ぎ、清潔を保ちます。「あなたがた」(全ての人)は、地上でこのような役割をすでに担っているのです。大切なのはその塩味が自分からのものではなく、イエスに従うことによって与えられていることを意識し、塩味を失わないように、イエスに従う道を歩み続けることです。イエスに従うことなしに、塩は塩味を保つことができません。だからイエスの愛の教えに従うのです。 
  
○「あなたがたは世の光である」とは        
 イエスに従う人たちは現に世の光であるということを意味します。イエスに聴きイエスに従う人たちが光である根拠は、まことの光である神の子イエスがその人々の内心に住み、神と共にあるからです。地の塩としての働きが、外に向かう行動的働きだとすると、世の光は、隠されずに輝かすことによって人々を引きつける内心的な働きといえます。イエスは二つのたとえを用いて、光の特徴は隠れることができないことにあると教えます。山の上にある町のともし火や燭台の上のともし火は隠れることができません。遠くからでも見ることができます。              

○ 聖書は、人を救う神の誠実な慈しみに照らされて、人が他者を愛しぬくことに導きます。他者とは隣人です。弱い立場の人です。孤児・夫を失った女性・障がい者・寄留の外国人・生活苦にあえぐ人々・病人・孤老などです。立派な行いは自己満足のためでも、義務感でもありません。       
聖書は、人々が神の愛に気づいて神をあがめるように、礼拝の心をこめて行いを行うように勧められています。どんな人にも神から与えられた使命があります。どんな人も他者にとって「塩」であり「光」であります。目の前の子どもたちに伝えます。「あなたたちに、神さまはおっしゃいます。どんな人も勇気と自分への自信をもってもらいたいのです」と。

○ コラムを紹介しましょう。ここにも「郷中教育」が生きています。
 かつて戦国時代にキリスト教を伝えた宣教師たちが、大名や武士ばかりではなく、多くの日本人の文化、生活の考え方が聖書的(イエスの説く愛)であることに驚きました。この列島で2000年かけて営んできた農耕文化がこのような日本人のよさを育んできたのでしょう。
 遠藤周作は、その時代世相を反映した小説「沈黙」と小説「侍」(モデル支倉常長)で、キリスト教と日本の文化衝突と文化融合をテーマに「神」を書きました。

○ 2月26日「海星の心を受け継ぐつどい」が児童会運営委員会によって行われました。
 今年度の6年生は27名入学し、途中ご家庭の事情で転出入があり、24名の卒業です。この数年の中でも男女の仲がこの時期までよく、授業中の熱心な姿勢も中学受験時期にも揺るぎませんでした。
 一方、新6年生は41名です。本校では珍しく女子の多い学年です。特に自主意識の高い子どもたちで、その様子は毎年の「学芸会」で十分に力を発揮し、海星ファミリーを楽しませてくれました。
 海星にも「郷中教育」に似た「海星ファミリーの教育」があります。私たちは、この子どもたちが、将来それぞれが属する社会・集団で「弱い立場の人々」の友であるリーダーに育ってくれることを、期待し祈り続けております。