福岡海星女子学院高等学校 福岡海星女子学院附属小学校 福岡海星女子学院マリア幼稚園  

【小学校の校長室から】平成25年6月1日 校長 山田 耕司

母親の自立と親子の関わり

○ 5月中旬、カトリックの女性の会に招かれて、カテドラル大名町教会でお話をしました。       与えられましたタイトルは、「私の自立、親子の関わり」です。宮原司教様・神父様・シスターも同席される中、約100名の若いお母さまから老婦人までの幅広い年齢層を前に、45年間の教員経験からお話をしました。70分でお話をしたかったことを文章に起こしてみました。                      


○ 子どもの幼年期、少年期、青年期それぞれの成長段階で母親として子どもとどのように関わればよいか、多くのお母さま方の共通した課題です。                            
今年は童話作家新美南吉誕生100年の年に当たります。「手ぶくろ買いに」「ごんぎつね」「おぢいさんのランプ」等小学校国語科教材で、小学生にもお馴染みの作家です。この新美南吉の作品を、親子で味わうことを通して親子関係を作っては如何でしょうか。
「手ぶくろ買いに」は、子狐が人間社会と初めて遭遇した一夜の出来事を通して、母狐と子狐の心情を味わう作品です。子どもたちは先生と級友と何日も何時間もかけて学び合います。それがお子さんのノートに記されています。テストの結果を大切にするお母さまがいます。ノートは見て頂いているでしょうか。わが子が、今、何を学び、何にこだわり、何を考えているか。共働きで大変忙しくても、夜お子さんが休んだ後、ノートを開いてください。朝食や夕食の食卓の話題は「手ぶくろ買いに」です。子どもの話を聴いてください。じっくりと聴いてください。                   
○ 「聴く」ことは大切です。赤ちゃんはお母さまの胎内でお母さまの心臓の音を聴いて10ヶ月過ごしました。なんと心地よい安心な時だったのでしょう。自らの生命をかけてこの世に誕生すると、すぐにその心音を求めます。お母さまの肌に抱かれお母さまの心臓の音を聴きやっと安堵するのです。                  

○ 青年期は加速する社会の中の小舟です。カウンセリング(聴く・待つ)の時代です。私の高校では、カトリック校、小規模校の特性を生かして一人ひとりの生徒に細かに関わる教育を進めています。悩みを持つ多くの生徒に、担任や養護教諭の手はいくつあっても足りません。そこで、臨床心理士と共働するため本校でもスクールカウンセラーを導入しています。                         
カトリックの高校の使命の一つとして、地域のニーズに応え小学校・中学校で不登校を経験した生徒の受け入れを一部しております。高校生の心理、心の中にどんな動きがあるのでしょう。生徒たちは、自己に封印して周囲に合わせて歩むことに疲れました。「自分の本当の喜びや将来を見つけることが難しい。」「私が分からない。」「だれか私の中にあるものを聴き出して。」と ……… 。今、この生徒たちを支える人的資源(人としての存在)が求められています。                 

○ 私の下を毎月訪ねて下さる保護司の方によりますと、少年院から退所してきた青年の社会への復帰率は約30%だそうです。少年院帰りの青年に対する誘惑や社会の厳しい現実を克服するのは並大抵ではありません。復帰できるには、その青年がどれだけの人的資源に恵まれているかが鍵です。彼等にとって人的資源は、保護司・民生委員・地域の方・職場の方・家族・親族・友人・恩師等であります。             

○ 私は、子育て・子育ちの時期で最も大切なのは、0歳から12歳までの人格の基礎が形成される時期だと思っております。家庭の愛情・家庭教育やしつけ、幼児教育や小学校教育の内容や質が、今、問われています。母親と共に歩んで頂ける人的資源が必要です。競争社会に勝つことに重きを置く一部の大人の考える価値観だけで、本当にいいのでしょうか。子どもたちは悩んでいます。苦しんでいます。求めています。どうか気づいてやってください。耳を傾けてください。                               

○ 「神は、お造りなったすべてのものをご覧になった。見よ、それは極めて良かった。」(創世記1-31)    神の子キリストは、人のために生まれ、福音を述べ伝え、十字架にかけられ、そして復活された。             
聖母マリアがそうであったように、私たちも、自分の価値観に因るのではなく、神の教えに自己をゆだねる(回心する)ことが出来るといいですね。ですから、神から与えられた「ありのままの自分を受け入れ、柔軟な姿勢で生きればいいのです。」母親としての自立の基本は、ここにあります。 親子の関わりの大切なキーワードは、主に少年期までは「聴く」、青年期は「待つ」だと思います。私たちは、マリアさまとイエスさまの関わりにそれを見ることが出来ます。