【卒業生近況】第16号 平成23年12月15日 副校長 高木義則
実 り の 冬 に
年末を迎え、今年も子ども達の努力の成果が次々と学校に届き、月曜日の全校朝会では図画や作文等の表彰が続いています。今週は校内図工展の表彰がありました。
この表彰に先立って2週間前に全職員で審査会を行いました。この審査会は、皆で協議の後、図工の松永先生に絵の見方・評価の観点を指導いただきながらの実施となり、私たち教職員にとっても絶好の研修の機会となりました。「版画は黒と白のバランスが大切。だから、紙版の列車は少し曲線で作ると余白がうまくできて動きができます。」「この動物は動きがとても面白い。もう少し大きく描いていたら、表情がはっきりして迫力が出るね。」「でも、無理に描かせたらダメ、子どもが自分でそう表現したいと考えていることを大切にすること。」等々。私は書が好きで時々書道教室に通っているのですが、黒と白のバランスの話は、書と同じだな(バランス面では生け花も同じだな、と勝手に思っているのですが)と興味深く思い、後日松永先生に児童画ついてお話を伺いました。
「児童画は大人の絵とは違う。絵は心を解放する働きがある。子どもの時には、絵を通してそのことを体験させることがとても大切。だから、絵を見ていると子どもの心が見える、子どもの声が聞こえてくる、そんな絵がいいんだよ。」「例えば、運動会の絵なら、競技をしている人物だけを描いたものより、応援する背景の人たちの様子まで描いている絵の方がその子の想いがより伝わってくる。」 松永先生は今年からの新しい取組、本校にマリア幼稚園の園児を招いて実施している絵画教室にも触れられ、「心がよく解放されている幼稚園児の絵は見ていて本当におもしろいよ。」と楽しそうに語られました。松永先生は以前にも「子どもが描いた木の絵を見るとその子の心の状態がよく見える。」というお話も聞いたことがあります。そのことも別の機会に是非詳しく伺ってみたいと思います。
2年前の「地の塩」で詳しくご紹介しました県文集、今年も本校の多くの子が入選しました。文集に作品が掲載される優秀賞には5名の子が。概算で15学級に一人くらいの割合でしか受賞しないこの賞に、6学級の本校から5名の受賞者が出たこと、本当に素晴らしい成果です。一昨年は2名、昨年は4名、今年は…、と着実に子どもたちが力をつけています。文集に名前の掲載される奨励賞にはなんと75名の子どもたちが入賞しました。こちらは概算で一学級に1人程度の割合になりますが、平均で1学級10名以上入賞している本校の子ども達には驚かされます。この成果は日々の努力の賜物と言えます。
今回、文集に目を通して感じたのは、工夫された題名のおもしろさです。題名には、主題につながる作者の想いが込められています。また、読み手に「これ、何のこと?・・・中を読んでみたいな!」と思わせる働きもあります。本校の奨励賞の子ども達の作品の題名を見て、この作品読んでみたいな、と思ったもののいくつかを紹介します。もちろん、これ以外にもたくさんあったのですが。
低学年…「一ねんぶりのはなび」「えがおでサーカス」
「クッキー大せいこう」「がんばって!お兄ちゃん」
中学年…「ビックマックとわたし」「地ごくのプール」
「最高のステージ」「やった、合かくだ 」
高学年…「どしゃぶりキャンプ」「少しちがう!!」
「今、ぼくはここにいます」「縁側は、いい」
どうですか、読んでみたいと思いませんか。
国語の教科書にもこの題名の働きに気付く作品がたくさんあります。4年生の「ごんぎつね」はよく考えると少し変な題名です。きつねの名前は「ごん」でそれだけでいいはずなのに、なぜ名前の下に「きつね」が付いているのでしょうか?この作品を詳しく読んでいくと、人間と友だちになりたかった一人ぼっちの小ぎつねの「ごん」が、とうとう最後まで人間に(人間と友達に)なれなかった哀しいお話だと気付いてきます。作者の新見南吉さんの想いが題名からも伝わってきます。こんな学習の繰り返しを通して子ども達の言語感覚は磨かれていきます。
図工も作文も大切なことは、大人が自分の感覚で「こうしなさい」ということをやめることだと思います。
「上から押しつけるのではなく、自分で考えていく、その力をつけてくださっていたのだと思います。」 これはある本の中で出会った、俳優吉行和子さんのけっして叱らなかった恩師に対する言葉です。厳しく叱っても教えるべきルール、マナーは当然あるのですが、私たち大人が子ども達の中によき種を蒔こうとする時、帰るべき原点がここにあるように思えます。
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